事業承継における信用調査情報の活用法②(全3回 連載記事)
3.代表的な調査項目
ここでは、代表的な調査項目である、①反社チェック、②人物調査、③経営状態、の3項目を取り上げ、(1)基本として欠かすことの出来ない【一次チェック】、(2)必要に応じて実施する【深掘り調査】、の2つについて、各手法の概要とメリット/デメリットを解説する。
① 反社チェック
【一次チェック】
- 新聞やメディア等の情報をデータベースへ蓄積しておき、対象が反社に該当するかどうかを確認する方法である。
- スピーディーに判明し、コストもあまりかからない[1]。
- 過去のメディア等に名前が載っていなかったり、調査対象メディアが限定的であった場合、また本人が改名したりしている場合、該当結果を得られず、見過ごしてしまう可能性がある。
【深掘り調査】
- 関係先へのヒヤリングや、日々各地裁判所へ足を運び、掲示板や開示されている判決文を書き写してくるといった方法で情報を蓄積しておき、対象者が該当するかの判定を行う方法がある。
- メディア等の一般的な情報源ではない、高精度の情報が得られる反面、費用は相当高額となる[2]。
② 人物調査
【一次チェック】
- 反社チェック同様、新聞やメディア等で得られた情報をデータベースとして蓄積しておき、照会のあった場合に対象者が該当する情報を抽出し、確認する方法。
- 匿名報道でない限り、過去の事件・事故、処分・罰則等の履歴についても確認可。
- 金銭的な支払い能力に関する与信情報[3]については、即時取得が可能。
【深掘り調査】
- 対象を配偶者等、本人以外にも拡大のうえ、メディアに基く情報だけでなく、過去の官報や裁判記録の照会、実際に関係先へヒヤリングに赴き、実態を明らかにしようとするもの。
- 完全オーダーメイドの調査手法で、コストは高くなりがち。
- 信用調査会社によって得意と不得意の分野が分かれ、成果物の完成度に差が出る。
③ 経営状態
【一次チェック】
- 信用調査会社が発行する企業レポートを取得し、評点を確認することが一般的。
一般的には50点をクリア出来れば問題は無いとされるが、中小企業の場合、資本金や規模がネックとなり高い評点を得にくい。点数だけではない総合的な観点も必要。
- 企業レポートとは別に対象企業が開示した決算関連資料[4]があれば、より詳しい経営状態が確認出来る。
重要な経営指標として、自己資本比率[5]、キャッシュフロー[6]などが挙げられる。
【深掘り調査】
- 過去年度の実績に基く企業レポートだけでは得られない、直近損益や営業進捗状況、訴訟等のトラブルの有無、実際のヒヤリングを通じた顧客や取引先の評判等。
- 後過程で実施するデューデリジェンス以前に、重要な情報を確認出来るケースがある。
[1]参考:1照会あたり、数百円~数千円程度のケースが多い。
[2]参考:1照会あたり、数万円~のケースが多い。
[3]CIC/日本信用情報機構(JICC)/全国銀行個人信用情報センター(JBA)
[4]企業レポートと別資料として、企業が開示した決算資料を販売している。企業レポートより高額。
[5]借入金等の負債を除く純資産/総資産。30%以上が安全の目安とされる。
[6]様々な定義があるが、経営における現金の状態がどうなっているかを示す。
執筆:GSRコンサルティング株式会社 渡辺 昇(企業経営アドバイザー 1級販売士 宅地建物取引士 マンション管理士)
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