会社のご売却における3つのポイント【事業承継コラム】

皆様こんにちは。GSRコンサルティングスタッフの白石です。今年も残すところあとわずかとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。寒さが厳しい日が続きますが、ご自愛ください。

さて、前回は中小企業の親族内承継に焦点を当て、「親の会社を承継したらやっておきたい5つのこと」についてお話ししました。お子様やお孫様に事業を継いで欲しいと願う先代は多いかと存じます。しかし、経営者の高齢化が進んでいく一方で、親族内承継が成立せず、黒字経営であるにも関わらず廃業せざるを得ないケースが増えています。理由は様々ですが、事業の将来性への懸念や若者の都会流出、親族間のトラブル回避などが挙げられます。その中で、「会社を畳むぐらいならば、売却して存続させよう」と考える経営者も多くいます。

—–少し立ち止まってください。事業売却は選択肢の一つであるものの、「単なる会社の売買」と考えて良いのでしょうか。会社丸ごとの売却とは、先代がこれまで築き上げた経営方針や資産、ノウハウ、顧客や取引先との信頼関係、そして従業員の将来など多方面に影響を及ぼす重大な意思決定です。社長は様々な想いがある中で会社を手放し、今後の事業発展や従業員の幸せを願われることでしょう。そのためにはM&Aを成功させなければなりません。しかし、成功するか失敗するかは「どこに相談し、誰の力を借りるか」にかかっています。

本コラムでは、埼玉県さいたま市の中小企業が「会社を売却しよう」と考えた際に押さえるべき3つのポイントを、実務的な視点から解説します。

①長期に渡り信頼できる相談先を見つけること

相談先との信頼関係は最重要です。M&Aには長い期間や労力がかかり、専門家の知識やスキルも必要です。単に会社を「売ります」「買います」では終わりません。相談先として、下記のような機関があります。

・公的機関:2011年5月の法改正により、「事業承継・引継支援センター」が設置されました。
・M&A仲介業者:新規参入が増えており、会社規模やサービス内容、価格帯は幅広いです。
・士業専門家:弁護士(法務調査など)、税理士(税金計算など)、司法書士(登記手続きなど)などに専門業務が依頼できます。
・金融機関:近年では銀行や信用金庫などもM&Aに注力しています。
・コンサルタント:事業承継の進め方が分からない場合の第一相談窓口として有力です。士業や仲介業者につなぎます。

事項にて大まかな流れと信頼関係の重要性について解説します。

M&Aにかかる期間と流れについて

中小企業のM&Aは長丁場で作業負担がかかりがちです。また、各所とのやり取りも多く、期間としては約半年から一年、長くて二年以上かかることもあります。以下、大まかかな手順となります。 

①売却準備     :依頼する専門機関を決定し、簡易調査を受けます。買い手候補の検討や資料作成等も依頼します。
②打診・マッチング :買い手候補に基本情報を開示し、必要に応じて面談などを行います。
③基本合意     :買い手と擦り合わせをし、基本合意書を締結します。
④DD(デューデリジェンス):買い手側が、事業・財務・法務などに関する詳細調査を行います。
最終合意・クロージング :最終条件の確認後、契約書を締結とクロージング(決済)を行います。

なぜ信頼性が最重要なのか

中小企業やオーナー企業では、経営情報の大部分を社長だけが把握しているケースも少なくありません。家族にさえ言いたくなかったことの一つや二つはあるでしょう。ですが、上記の通り専門家に依頼するということは、会社の資産や財務状況の詳細を知られることであり、場合によっては社長の個人資産や借入、所有不動産、家族関係、役員報酬等など極めてセンシティブな情報を開示する必要があります。だからこそ、根掘り葉掘り聞かれても不快ではない、嘘をつかないで良い、他では言いづらいことも相談できるほど信頼できる専門家を選ばなければ、M&Aは失敗する可能性が高くなります。

「紹介だから安心」という考え方は危険です。

金融機関や士業に相談後、M&A仲介業者を紹介されるケースが多いですが、売却側の意向を大切にしてくれる相手かどうかはよく見極めてください。残念ながら紹介手数料目的であったり、社長の意向よりも売却条件を重視したりする業者も少なくありません。信頼できる相談先を見極めるには、次のポイントに注意してください

過去の成約実績は明確か

M&Aの成功率を上げるには、法務・財務・税務などの専門知識や豊富な成約経験が必要です。依頼を検討する業者の成約実績(案件数・得意とする業種・類似案件の有無・担当者の個人スキルなど)を確認しましょう。また、上場企業や大手企業と、中小企業やオーナ企業ではM&Aの戦略も異なりますので、自身の会社の規模に合った業者を選びましょう。

手数料体系は明確か

M&Aが普及する一方、手数料が高かったり料金体系が不透明であったりするため、廃業する企業もまだまだ多いです。着手金や中間報酬、法務調査費用、成功報酬など各場面で費用が発生しますが、それぞれ相場内であるか確認しましょう。また、M&A仲介業者らの成功報酬は1~5%であることが多いですが、中小企業のM&Aの場合は規模が小さく、レーマン方式での成功報酬算出額<最低報酬額となった場合に、最低報酬額で請求されてしまうことがあるので注意してください。そして基準額ですが、①M&A取引額②企業価値③移動総資産の3種類があり、同じ手数料率でも報酬金額が変わってきます。基準額も確認しましょう。

売り手側の立場に立ち、売却後の社長の人生まで考えてくれるか

ノルマ達成のために、良く見える条件(今が一番高く売れるなど)を提示して案件成約を急がせたり、売却額の減額を迫ってきたりなど、売却側の意向を大切にしない担当者もいます。目先の利益を優先し、クライアントに寄り添わない担当者が、売却後の事業の発展や社長の今後について親身に考えてくれるでしょうか。答えは明白ですよね。会社を売却したら終わりではありません。売却後、喪失感で不安を感じたときには寄り添ってくれる、そして今後の資産運用についても一緒に考えてくれる担当を見つけましょう。一息ついたら売却益を使って事業投資をする、資産運用をする、余生をゆっくり過ごす等選択肢は様々ですが、最後まで気軽に相談できる専門家を見つけてください。

②高い金額・良い条件を見つけてくれる支援者を選ぶこと

良い条件で売ることの大切さについて

「せっかく売るなら高く売りたい」これが全ての経営者に共通する本音ではありますが、同時に「良い条件で売る」ことが極めて重要です。高値売却に囚われがちですが、それ以上に従業員の雇用や事業の継続性、社長が受け取る売却代金の最適化や負担軽減について考慮して下さい。

会社運営の継続性について

会社のブランドや理念を残し、できれば本社や事業所、工場を移転せず続けられると良いでしょう。従業員の離職防止や取引先との関係維持にも繋がります。良い条件での売買が成立すると、従業員の解雇リスクが低減されます。また、一定期間(一年間など)は給与水準や福利厚生が前社の条件で保証され、急激な生活水準の変化を防ぐことができます。
また、買い手側にとっても既存の経営資源や人材、ノウハウなどをそのまま使えることは、早期の相乗効果を生み出せるため有利になるでしょう。

社長の受取代金の最適化や売却後の条件について

売却後の受領方法についても取り決めましょう。売却益として保有する株式の対価を受け取る方法や(株式譲渡)、退職金として受取る方法などがあります。退職金として計上すると損金算入できるため、会社の節税にもなります。(※諸条件により異なるため、顧問税理士にご相談ください。)社長や会社にとって最適な受領方法を決めておきましょう。
また、売却後は代金を受け取り、そのまま事業のプレッシャーから解放されたい社長も多いです。業務引継や役員として残りたくない場合は、売却条件に退任についても明記しましょう。

良い条件を引き出すM&A会社の特徴

①多数の買い手ネットワークを持っており、複数の買い手候補を競わせられる。
②県内企業だけではなく、県外・上場企業・投資ファンドなどとの繋がりがある。
③企業価値を高めた(合法の範囲内で)財務分析や事業計画の作成ができる。
④売り手側の希望を明確に言語化し、交渉に反映できる。
⑤お客様やそのご家族のことも長期的に考え、サポートができる。

売却条件の大切さについてお話しましたが、同時に高値で売る戦略も考えたいでしょう。自社の強みを棚卸し、複数の買い手に業界での競争優位性や成長可能性をアピールしたり、有利な売却時期を検討したりするのですが、担当者の力量が結果を左右します。複数のM&A会社と面談し、吟味してください。

③法務・税務・売却後の資産運用・節税対策まで一体対応してくれるか?

売却後の問題

売却が成立した瞬間がゴールと思われがちですが、実際はここからがスタートです。売却後、何かしらの問題に直面する社長も少なくありません。起こりうる問題として、下記のようなことがあります。

・売却益にかかる税金が予想以上に高い
・金融資産が大きくなり、資産運用の方針が必要になる
・相続対策を急ぐ必要が出てくる
・不動産の整理や法人の後処理が残る
・遺産分割などの対策が必要になる

売却後の残務処理や納税など対策、インフレ対策や次世代への承継のための資産運用など、すべきことは多岐に渡ります。また、多額の資産があったり、不動産を持っていたりする場合はより早めの相続対策を考えたほうが良いでしょう。
法的手続き・資産の管理や運用・節税や相続対策などは手続きが複雑で、各分野の専門家のサポートが必要です。しかしM&A業者によっては、クロージング後のフォローがありません。では、誰にサポート依頼することが最善でしょうか。

最初から最後までワンストップで対応できる専門家が必要

事業承継の専門家は、売却プランの設計から売却後のサポートまではもちろん、その後の派生サービスまでワンストップで行います。弁護士や税理士、司法書士などの各分野のプロフェッショナルと連携し、長期に渡ってサポートしています。
次のようなサポート例があります。

①税務手続き
売却時にかかる節税対策のシミュレーション(税務・法律の範囲内)や株価算定、財務・税務資料の精査などをします。また、買い手側のDDによる税務・法務調査で不利益を被らないよう、指摘されそうな箇所の洗い出し、リスク回避のための対策を立てます。クロージング後は売却益(譲渡所得)にかかる所得税などの申請手続きや、資産運用と節税の両立についてアドバイスします。後に買い手側から過去の税務処理に対する問い合わせがあった場合には、税理士が対応します。  
②法務手続
M&Aに必要な契約書作成からリーガルチェックまで行います。また、買い手側が提示する契約内容に売り手側が不利になる事項がないか調べたり、買い手側のDDで不備を指摘されないようリスクを整理したりします。売却後は、経営者個人が会社に対して行っていた個人保証や担保提供が適切に解除されたか確認し、されていない場 合は解除手続きを行います。また、買い手側から法的措置を取られた場合は、交渉や訴訟の代理の対応を行います。
③資産運用
リタイア後は収入源がなくなります。老後資金や承継資産形成のために運用をしますが、会社経営とは違い不動産や投資信託、株式などへの分散投資が基本となります。効率的なポートフォリオの構成を考えたり、運用サポートをしたりします。
④不動産
①や③と関連しますが、不動産については「資産保全・分散投資」と「相続・節税対策」の2つの側面から考える必要があり、税務と法務が複雑に絡み合っています。相続コンサルタントや司法書士などが節税スキームを設計したり、贈与計画を立てたりします。

上記のサポート例はほんの一部であり、内容は困りごとや課題は状況によって様々です。はじめのうちは、「考えるべきことが沢山あるな」程度に思っていただければと存じます。「課題が沢山ありそう」「そもそも何が問題になりそうか分からない」という方はワンストップサービスができる事業承継専門家にご相談ください。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。埼玉県は事業承継需要が高く、買い手ニーズも豊富な地域です。
正しい相談先さえ選ぶことができれば、会社を守りながら高条件でご売却できる可能性があります。

私たちGSRコンサルティングは、士業専門家と共同で、埼玉県の事業承継をサポートしています。初回無料相談を随時行っておりますので、是非一度お気軽にご相談ください。

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監修:中島一郎弁護士 CLOVER法律事務所

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