不動産鑑定評価の考え方①【不動産コンサルタントコラム】
不動産コンサルタントの山中と申します。
相続における資産の中で約35%を占める不動産について、鑑定評価における不動産(土地)の考え方を何回かに分けて書いていこうと思います。少しでも読者の皆様のお役に立てば嬉しく思います。
1.不動産の特性(他の財と異なる不動産の特徴)
鑑定評価において不動産は、他の財と異なる特性として、地理的位置の固定性、不動性(非移動性)、永続性(不変性)、不増性、個別性(非同質性・非代替性)等があり固定的であって硬直的であるものであるとされます。
これは、土地それ自体に内在する固有の特性であり、物理的観点から捉えた特性であるといえます。このことから特性の中の一つ個別性(非同質性・非代替性)とは、個々に区画された土地は、同一規格品の大量生産が可能な他の一般の財とは異なり、少なくとも地理的位置が同一のものは二つとないため、物理的に同質性、代替性を有する土地は存在し得ないという意味になります。
2.不動産の価格に関する原則
不動産の鑑定評価では不動産の価格を決定するにあたり、鑑定評価に必要な指針として、価格の形成過程における一定の法則性を認識し、それらの法則性を具体的に表した諸原則を活用すべきとしており、この原則の中に「代替の原則」というものがあります。
代替の原則とは、一般の財の価格形成においても当てはまる原則であります。 これは、実質的に同等の効用を有する二以上の財が存在する場合には、購入者は価格が最も低いものを選択し購入することから、このような財の価格については、相互に影響を及ぼし合って最も低い価格がつくということです。
この原則を不動産に当てはめて考えると、ある不動産の価格は、その不動産と同等の効用を持ち、代替が可能である他の不動産又は他の財が存在する場合には、それらの不動産又は財と相互に競争を行い、結果的に代替可能な不動産等の価格と一致して価格が決まるということになります。
3.非代替性と代替の原則の関係
ここまでくると、不動産についてはその特性として、代替性が無いと言っておきながら、価格は代替可能な不動産等の価格と一致して定まるというのは、矛盾があるのではないかとご指摘があるかもしれません。
この一見矛盾にも思える点については、鑑定評価では、不動産の特性としての非代替性とは、あくまで不動産を物理的観点から捉えたものであるのに対し、代替の原則は不動産を「効用」という観点から捉えることにより、広く代替性を認めるものであると考え、矛盾するものではなく同時に成立し得るものであるとしています。
不動産の価格の鑑定評価は、①その不動産を再調達する場合の費用 ②同等の効用を有する不動産の取引価格及び ③不動産を利用することによって得られる収益の三つの面から行われますが、これは、代替の原則に基礎をおくものとなっています。
すなわち、ある不動産の価格は、その不動産と同等の効用を持ち、代替が可能である他の不動産が存在する場合には、相互に競争を行うことによって、その代替可能な不動産の価格に一致して定まるということになります。これは三つの面のうち②の面に対応するものになります。
また、ある不動産について、その不動産と同等の効用を持つ不動産等を新規に調達することができる場合には、その不動産の価格が再調達に要する原価を超えると需要者は新規に再調達する方法を選択するので、結局のところ、不動産の価格は再調達原価を上限として定まるものとなります。これは三つの面のうち①の面に対応するものになります。
さらに、この代替の原則は収益用の不動産についてもあてはまるものであり、ある不動産に求められる収益性は、収益物件として代替性を有する他の不動産又は財に係る収益性と関連して定まります。これは三つの面のうち③の面に対応するものになります。
このように、代替の原則は、不動産をその効用と関連付けて考えることにより、不動産の個別性(非同質性・非代替性)とも両立するものとなるのです。
いかがでしたでしょうか。 本日は、不動産鑑定評価における「不動産」について、不動産の持つ非代替性と代替の原則についての関係から考えてみました。
他の財と異なる特性を持つ不動産の適正な価格を一般の方が求めることは非常に困難な部分がございます。不動産についてのお悩みがございましたら、一度ご相談いただければ幸いです。
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