不動産鑑定評価の考え方②【不動産コンサルタントコラム】

不動産コンサルタントの山中と申します。

本日は相続における資産の中で約35%を占める不動産について、鑑定評価における不動産(土地)の考え方の続きを書いていこうと思います。

 

  • 不動産の最有効使用という考え

前回のコラムの中でもお伝えしたとおり、不動産の鑑定評価では不動産の価格を決定するにあたり、鑑定評価に必要な指針として、価格の形成過程における一定の法則性を認識し、それらの法則性を具体的に表した諸原則を活用すべきとしており、この原則の中に「最有効使用の原則」というものがあります。

不動産(土地)は、他の財と異なる特徴(不動産の特性)として「用途の多様性」を有しています。これは、同一の不動産について異なった使用方法を前提とする需要が存在可能であることを指しています(同じ土地の上でも人によって住宅を建てるのか、店舗を建てるのか等異なった需要が存在する)。では、そのように異なった需要が存在する中で、不動産の価格はどのように決まっていくでしょうか。そこでは、異なった需要を前提とする需要者の間に競争が生ずる結果、最も高い価格を提示できる需要者がその不動産を取得することになります。翻って、そのように高い価格を提示できるのは、その不動産を利用することによる収益性、快適性等が最大となるような使用方法を前提としているからであると考えられます。ここでいう収益性、快適性が最大となる使用方法を不動産鑑定評価では、その不動産の「最有効使用」として捉え、不動産の価格は、この「最有効使用」を前提として把握される価格を標準として形成されると規定しています。

※最有効使用の原則:不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準として形成される。(不動産鑑定評価基準 第4章 Ⅳ 最有効使用の原則より)

 

  • 最有効使用の原則と現実の不動産の価格との関係

不動産鑑定評価の中で、その行為基準ともなる不動産の最有効使用については、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものとされており、具体的に価格を求める手法(原価法・取引事例比較法・収益還元法など)を適用する際にもその考え方を活用、反映させています。

現実の社会経済情勢、つまり現実のマクロ経済・地域経済の動向、不動産の需給動向、不動産に関する法制度や税制、不動産に関する取引慣行、市場参加者の価値観等を与件として扱い、社会経済情勢の一部を捨象したり、理想的な条件に置換したりしないことが要請されているということです。

ここで、現実の不動産について考えてみたとき、ある不動産についての使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではない場合があります。不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮できていない場合があります。

これは、現実の不動産の売買においては当事者間の特殊な事情(売り急ぎや買い進み、特別の利害関係や縁故関係等)がその取引価格に影響を与えることが多く、そこで成立した価格(現実の不動産の価格)は必ずしもその不動産の適正な価格を反映していないということになります。このように現実の不動産の価格として認識されるものには、特殊な事情の下に成立した価格(高過ぎる価格または低過ぎる価格)、売り希望価格、不動産業者の広告掲載の売却希望物件の価格等があり、現実の価格には幅があり、曖昧であることが多いと言えます。

以上のように不動産の鑑定評価によって求める価格と現実の不動産の価格とは必ずしも一致するものではありません。

不動産鑑定評価によって求める価格は、特殊事情を排除した客観的な交換価値を表す価格であり、不動産の最有効使用を前提として把握される価格といえます。

 

いかがでしたでしょうか。

本日は、不動産鑑定評価における「不動産」について、最有効使用の観点からから考えてみました。

 

他の財と異なる特性を持つ不動産の適正な価格を一般の方が求めることは非常に困難な部分がございます。不動産についてのお悩みがございましたら、一度ご相談いただければ幸いです。