不動産を高く、良い条件で売却する方法④

ポイント4 売却する不動産の種類を見極め、売り方に気をつけること

不動産の種類別売却方法

売却方法は、不動産であればなんでも同じだと思いますでしょうか?

実は、売却したい不動産の種類で、売り方はかなり違ってきます。そして、その売り方次第では、数千万円もの差が出てきてしまうことがあるから不動産は怖いのです。

そもそも不動産の金額とは、どのようにして決定されるのでしょうか。詳細は不動産鑑定士の森田先生の章でご確認頂きますが、不動産の査定方法には、「原価法」、「取引事例比較法」、「収益還元法」の3つの方法があります。

原価法は、〝同じ建物をつくるにはいくらかかるか?〟という面から不動産の価格を導き出す方法です。

取引事例比較法は、多数の取引事例を集めて、そのなかから適切な事例を選び、その取引価格をもとに、必要に応じてその不動産に影響した要因を取り除いて修正、比較考慮して対象不動産の価格を求める方法です。

収益還元法は、商業地などの不動産の評価に向いている方法で、その不動産が、家賃など、将来生み出すであろうと期待される総収益の現在価値の総和を求めて、その不動産の試算価格(収益価格)を算出する方法です。

この3つの価格査定方法は、不動産の種類により使い分けられます。例えば自宅は取引事例比較法、収益物件は収益還元法です。ちなみに、一つの物件で、この2つの方法を用いて価格査定を行なうとどのような結果になるでしょうか? 同じ金額帯になるのであれば問題ないのですが、数千万円もの差異が出てくることもあるのです。これは慣れていないと、なかなかわからないものですが、この仕組みを知らないことで損をするケースもあるのです。

以下、物件別に、簡単にですが売却方法を記載します。本質的な部分を押さえていただければ、大きなミスは防ぐことができますので、しっかり押さえていただければと思います。

自宅

売却しやすいタイプの不動産です。目安になる価格は、周辺の取引事例と売り出し中の物件から導き出すことができます。相場観も収集しやすく、大手を中心に幅広く声がけすることで、より高い金額と良い条件での売却を狙うことができるでしょう。

空き地

比較的売りやすいタイプの不動産です。気をつけるポイントとしては、買主の用途によっても価格差が生まれることです。例えば、空き地を自宅として活用したい方と、収益物件を建築してビジネスを興したいケースとでは、購入金額が変わってきます(買主の評価の仕方がポイントです。収益物件を建築予定の方が将来のキャッシュフローを鑑みより良い条件を提示してくることがあるでしょう)。

収益アパート・マンション

収益物件は年間利回りから売却価格を算出します。そして、これを得意とする不動産会社がいます。このような会社は不動産を高く購入することが可能なお客様を多く抱えています。いかにそのような不動産会社に声をかけることが出来るかがポイントになります。尚、前項にて収益還元法の査定と取引事例比較法の査定をご案内しましたが、両方の査定方法を知らないと不動産会社の言い値で売却してしまい損をするケースがあることをお伝えしたいと思います。収益物件だからといって、収益還元法で査定することが正しいとは限らないのです。

ビル

アパート・マンションと違い、金額が大きくなり、購入希望者を探す難易度が上がります。購入希望者が法人であることが多くなり、住宅を扱う不動産会社ではなく、法人取引に強い不動産会社を探す必要が出てきます。

底地・借地

底地・借地は、プロでも買い取りたがらないことがあります。権利関係がややこしかったりするのはもちろん、そもそも地代が相場よりも低く、投資物件として魅力がないからです。一方、最近では底地・借地専門の不動産会社が台頭してきています。このような会社は、底地もしくは借地を買い取った後、対象不動産を所有権化すべく買取交渉を進めていきます。

商業物件

商業物件は入居しているテナントによって対応が変わります。例えば、だれもが知っている飲食店が入っている商業物件と、聞いたこともないお店が入っている商業物件では賃料が同じであっても買主の見方は変わってきます。住宅専門の不動産会社では扱えないところもあり難易度が高いため、商業専門に扱っている不動産会社に相談することがポイントです。

 

〔事例〕底地を借地人に売却して、ハッピーな結果となったCさん

Cさんは、横浜のとあるエリアの地主です。14代目ということで、歴史の長さを感じます。Cさんは今70歳。まだまだ元気で、あと30年は元気に生きたいと考えていますが、子供が2人いて、孫も生まれたことがきっかけで相続を考えるようになりました。

そのなかで一つ気になっていたのが、底地を所有していることでした。土地面積はそれほど大きくないものの、借地権者から地代を毎月もらっていたので、ずっと気になっていました。ほかに所有している不動産は、アパート、マンションだったり、店舗だったりするので、今まで通り、管理を任せている不動産会社に運用を託していれば良かったのですが、底地はCさんの一存では何もすることができず、〝このような不動産を子供たちに相続させても大変なだけなのでは?〟と思うようになってきていました。

そんな中、ホームページを見ていただき、コンサルタントの私たちにご相談いただきました。

相談のなかで地代の金額を伺うと、想像以上に低額で借地権者に土地を貸していることが判明しました。それを知って驚いたCさんでしたが、そもそもたいした収入でもなく、このタイミングで思い切って整理したい、と話されたのでした。

底地の売却の仕方には、いくつかのパターンがあります。市場にて売却活動を行なう、借地権者に売却を打診する、借地権者と一緒に売却するなど考えられるのですが、今回は、借地権者に買ってもらうことを第一に考えました。なぜなら、今回のケースではその方法が、一番高く買ってもらえる可能性が高いからです。

打診した結果、借地権者はその土地を気に入っていて、これからも長く住みたいと考えていたことがわかりました。そもそも借地権者から土地を購入する旨、そろそろ打診しようと考えていたところ、このような相談をいただき、とても嬉しいとおっしゃられたのです。

Cさんと借地権者はほとんど面識がなかったものの、タイミングも良く、友好的な交渉をすることができ、Cさんが想像していた以上に高い金額で、底地を借地権者に買っていただくことができました。