不動産を高く、良い条件で売却する方法①

ポイント① 不動産の売却は、金額と条件はもちろん、売却後の状況も想像して対応すること

時代は購入・土地活用より売却の流れになってきている

 

相続不動産対策というと、現金で不動産を買ったり、借入を行ないアパートやマンションを建築したりすることが主流です。本来であれば、不動産活用の意思決定に際しては、売却をするのか・活用(リノベーション・コンバージョン含む)するのか・現状維持の3点検証をしっかり行なっていただきたいのですが、コラムの関係上、今回は不景気の足音が聞こえつつある時代の流れに沿って検討が必要となるであろう不動産の売却の戦略についてご説明させていただきたいと思います。

まず、不動産市況について確認してみましょう。

不動産価格はここ数年、首都圏を中心に価格が上昇していました。平成30年7月1日に発表された路線価によれば、銀座の路線価はバブル期の水準を超え過去最高を記録したとのこと。3大都市圏は安定しているものの、地方については下落傾向となりリーマンショック以降、厳しい状況が続いています。そのようななか、かぼちゃの馬車を発端としたスルガ銀行ショックをはじめ、東証一部上場のTATERUの不動産投資不正問題等が起こり不動産市場は荒れ模様となってきています。

さて、この状況を、皆さんはどのように判断されるでしょうか?

私は、不動産の売り時あるいは資産組み替えのチャンスであるととらえます。どういうことか説明しましょう。

まず、売り時というのは、高値相場が形成されているからです。もし高く売れるのであれば、今、売却してしまったほうが良いと思わないでしょうか。そして、地方であれば、より早く売却したほうが良い。これはなぜでしょうか?

先ほど、価格が下がり続けていると言いました。「それでは金額が上がるのも待てば良いではないか?」と、そのようにおっしゃるお客様もいらっしゃいます。しかし、私はそうは見ません。

日本の人口統計データより2020年からの人口減少ラインを見てみると世界的に見ても日本は人口減少が早いことが分かります。人口が減るということは、不動産の使い道が減ることにつながります。そうなると、まずはどこの不動産から使われなくなるか? 間違いなく人口の少ない地方からでしょう。すると、地方の不動産は、ますます価値が減少する可能性が出てくる。このようにして地方の不動産はもっともですが出来る限り早く売却して収益を確定させたほうが良いというのが私の考え方です。

さて、次に売却について一つの事例をご紹介いたします。残念ながら不動産売却で失敗してしまったケースです。このケースでは、あまり深く考えずにただ売却するだけでは失敗することがあることを示唆しています。

 

〔事例①〕相続で取得した不動産を売却して損をしたAさん

Aさんは、千葉県にて代々農家を営む家系の長男として生まれました。一人っ子で、何不自由なく育てられ、父親に習って農業を引き継ぐ予定でした。しかし、平成に入り、農業で生計を立てるのが厳しくなるなか、お父さんが突然亡くなってしまったのです。

幸い、相続人は母親と長男であるAさんだけ。Aさんの妻は養子縁組しておらず、揉める要素はありません。しかし、それなりの規模の不動産があるため、5000万円を超える相続税の支払いが必要でした。お父さんは、不動産は多く残してくれたものの、現金は農業による経営の厳しさもあり、1000万円しか残っていませんでした。Aさんの手元資金を考慮しても、相続税の納税には3000万円足りません。困ったAさんは、古くからお付き合いのあった金融機関から紹介してもらった不動産会社に、不動産売却の相談をしました。

その不動産会社は、それなりに地元では名の知られている会社でした。金融機関からの紹介ということもあり、安心したAさん。不動産会社からの提案通り、どんどん話を進めていきました。結果として、自宅の横の不動産を5000万円以上で売却することに成功。相続税の納税をしても余るほどの結果となり、一安心でした。

その後、数か月が経過して、Aさんのご友人を通して私をご紹介いただきました。もともとは相続税の還付請求にかかるご相談だったのですが、相続税納税のために不動産を売却したと聞いて気になった私。よくよく聞いてみると、不動産会社に任せきっていて、相場もご自身でそれほど調べずに話しを進めていたとのこと。自宅の隣地を売却したというのも気になり、無料で調査させていただいたのですが、買主が不動産会社らしく、相場より低い金額で売却をされていたことがわかったのです。

そもそも対象不動産は500平米の土地なので、個人でも十分に購入可能です。にもかかわらず、不動産会社の買取となった。かつ自宅の隣地を売却してしまったというのが失敗だと感じました。

自宅の隣地ということは、自宅の一部としても活用可能です。今後、自宅に賃貸併用住宅を建築する、自宅を建て替えるなどの選択が出てきた際、隣地も一体活用できるとなると選択の幅は広がります。しかしAさんは、その選択を検討することもなく売却してしまいました。

このような選択ができることやリスクを説明しない不動産会社も悪いのですが、すでに時遅し。過去に戻ることはできず、隣地には密集して建てられた建売住宅が5棟も立つことになり、住んでいて圧迫感を感じることになりました。反対側に住む方からも景観が悪くなったと言われ、関係も少しギクシャクしてしまったとのことでした。

※参照 円満相続をかなえる本