コロナ禍における新たな取組みの事例について①(全2回 連載記事)
本年1月19日の日経新聞朝刊経済欄において、「地銀の過半 引当金見直し」というタイトルで、新型コロナウイルス禍の長期化による融資の焦げ付きに備え、金融機関が対応を急いでいるとの記事が掲載された。
当初、新型コロナウイルスの影響がこれほど長期化するとは多くの人が予想せず、コロナ融資や補助金等の強力な支援策によって事業を継続してきたものの、多くの企業にとって期末となる3月末を目前に、今期の着地見込を見据え、来期以降の事業をどうしたらよいかと悩む経営者は多いと思われる。
本コラムでは、コロナ禍によって事業環境が変化し、今後もコロナ前の事業環境に完全に戻るとは考えにくいということを認識したうえで、影響を大きく受けている食品関連事業者に関する支援策と、新たな取組みを行っている事業者の事例を紹介する。
1.新型コロナウイルス関連倒産の状況
グラフの通り、2021年の企業倒産件数は、6,030件と、コロナ禍の国をあげた各種支援策[1]が奏功し、過去数十年の中でも低水準にとどまっている。
一方、2021年の新型コロナウイルス関連倒産は1,668件で、前年の2020年(799件)の2倍となり、2020年2月からの累計は2,467件に達し、事業継続を断念せざる得ないケースが増えてきている。
コロナ禍の影響が今後も見込まれ、売上の回復を見通しにくい中、過去に受けたコロナ融資[2]の返済が開始されるということは、資金繰りが悪化し、最悪のケースは事業継続そのものを断念することにもなりかねない。
代表的なものは、日本政策金融公庫が扱う「新型コロナウイルス感染症特別貸付」。
最長5年間の元本据置措置や、一定期間利子補給を受けることで実質無利子となるメリットがある。
2.食品関連事業者への主な支援策
農林水産省は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける農林漁業者・食品関連事業者への支援策として、令和4年1月、支援策の概要をまとめたパンフレットを公開している。
同パンフレットでは、農林水産省による具体的な支援策として、以下のケースを含めて、計13のケースに関する支援策が挙げられている。
- 新たな販路等を開拓したい
- 飲食業の需要を喚起したい
- 価格下落に対して経営の安定を図りたい
支援の具体的な内容を確認すると、あくまで事業者が主体的になって取組みを推進することに対して、経費の一部を補助するといったものが中心となっている。
公平性を欠くのではないかと賛否両論があったコロナ禍の影響を被った事業者へ一律に金銭を交付するといった制度[3]ではなく、今後の事業継続に向け、創意工夫して取組もうとする事業者を対象に、一部費用の助成等の支援を行なうという支援策は、公平で理に適ったものと考えられる。
農林水産省以外の省庁が定める他の制度については、経済産業省が取りまとめたパンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」において、資金繰り、設備投資・販路開拓、経営環境の整備といったニーズを踏まえた制度内容が掲載されており、また制度に改定があった際には、タイムリーに更新されているので、ご参考頂きたい。
[1]各種支援策:資金繰り支援、給付金、経営相談等
[2]コロナ融資:新型コロナウイルス感染症で影響を受けている事業者向けの各種融資の総称。
[3]例として、新型コロナウイルス対策の時短営業に応じた飲食店に支払う協力金については、受取対象とならない業種がある、多店舗展開する事業者にとって規模感に見合わない、個人店等では通常時の営業と比べて、協力金受領による利益の方が上回る、等の意見がある。
執筆:GSRコンサルティング株式会社 渡辺 昇(企業経営アドバイザー 1級販売士 宅地建物取引士 マンション管理士)
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