建築物の構造に関する仕様規定【建築コラム】
これまでの建築構造に関するコラムについては、構造計算の基本となる考え方をご紹介してきました。そして、構造設計事務所にて構造計算のプロにより計算が行われ、安全が確保されています。
しかしながら、全ての建築物において構造設計事務所による構造計算が行われているのでは無く、建築基準法により規定された一部の建築物については、別途規定された仕様を満たすことで、建築が認められています。
建築基準法第6条1項の四号に規定される建築物について、特例による構造に関する仕様規定があり、本日はそちらをご紹介いたします。
四号建築物とは
建築基準法第6条1項の四号に規定される建築物について、まずは建築基準法の条文をご紹介します。
四 前3号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)もしくは景観法(平成16年法律第110号)第74条第1項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
となっております。
まず、「前3号に掲げる建築物を除く」を満たす建築物を考えると以下のようになります。
・特殊建築物ではない
・鉄骨造→平屋建て、200㎡以下
・木造→階数が2階以下、延べ面積が500㎡以下、高さ13m以下、軒の高さ9m以下
ということになります。
その地域が上記条文に該当する住宅であれば当てはまるため、多くの住宅が該当することになります。
それでは、特例による構造に関する仕様規定のうち、壁量計算というものについて、簡単にお話しいたします。
壁量計算
仕様規定の1つに壁量計算というものがあります。
こちらは、地震時の必要壁量と防風時の必要壁量が規定されており、計画されている建物の存在壁量がその基準を満たしているかというものになります。
地震時の必要壁量
各階の床面積 × 法令で規定された係数 = 地震時の必要壁量
となります。
防風時の必要壁量
各階の見付面積 × 法令で規定された係数 = 防風時の必要壁量
見付面積とは、各階の床面から、1.35m以上の部分から屋根までの、東西方向、南北方向の面積になります。
存在壁量
こちらは耐力壁の壁量を計算します。
耐力壁については、その仕様により「壁倍率」というものが決まっており、その壁倍率を掛け合わせます。
こちらも南北方向、東西方向のそれぞれの壁量を計算します。
平面図から各階の耐力壁の長さを、東西方向・南北方向に合計します。
東西方向の耐力壁の長さ × 壁倍率 = 東西方向の存在壁量
南北方向の耐力壁の長さ × 壁倍率 = 南北方向の存在壁量
右図は、説明を分かりやすくするためのイメージ図です。実際には各耐力壁について壁倍率が記載されています。
耐力壁の存在壁量を、赤の方向と緑の方向についてそれぞれ合計して計算します。
判定
地震時の必要壁量 < 存在壁量(東西・南北方向 合計)
防風時の必要壁量 < 存在壁量(東西・南北方向 各々) となってきます。
このような形で、条件に該当する壁量による建物を安全性を見ていきます。
設計事務所では、安全性を考え、必要壁量をより多くとるように、独自に考えているところもあります。
改正建築物省エネ法による四号建築物の範囲縮小
さて、ここまでご紹介した四号建築物ではありますが、実は建築物省エネ法の改正により、2025年度以降、上記に書いた建築物よりも、適用される範囲が縮小されます。
また、縮小後には、本日ご紹介した壁量計算につきましても、より安全性を増す基準となります。
改正に関する詳しい内容は、国土交通省に改正建築物省エネ法の特設ページがございますので、ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou.html
本コラムを通して、一部ではありますが、建築物の安全性評価の流れを理解して頂き、設計者を選ぶ上で、また、ご自身の所有されている建物を見て頂く上で、お役に立てれば幸いです。
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