親の会社を承継すると決まったらやっておきたい5つのこと

こんにちは。GSRコンサルティングの木村です。紅葉が鮮やかな季節を迎えましたが、いかがお過ごしでしょうか。
昨今、中小企業における事業承継ニーズが年々上昇しております。本日は承継時に抑えておきたいポイントをお話しますので、ご参考になりますと幸いです。

事業承継には主に①親族内承継②従業員承継③社外への引継ぎに分類されますが、本日は親族内承継について触れていきます。
これまで親族内承継は、減少し続けているものの、最も多い承継方法でした。しかし2018年には4割を切り、2024年には内部昇格(36.4%)が親族内承継(32.2%)の割合を上回りました。(全国「後継者不在率」動向調査(2024年):帝国データバンクより)
今後両差は開いていくと見受けられます。減少要因としては①相続・贈与税や個人保証の問題②子どもたちの都市部への流出③経営者になることへの不安④親族間トラブルのリスク回避などが挙げられます。安定性を求めたい・都市部で働きたいと考える若者が多い中、会社を継ぐと決めてくれた子どもは貴重な存在です。末永く事業を守るためにも先代と次世代が力を合わせ、可能な限り対策を講じられるのが賢明ではないでしょうか。本日は対策すべき5つのポイントをご紹介します。

経営状況の正確な把握と棚卸

貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)、個別注記表、キャッシュフロー計算書など計算書類の解釈の仕方がわからないまま後継者になることも少なくありません。最低3年分、できれば数年分の資料を見てみましょう。複数書類の把握が難しい場合でも、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)だけは読み取れるよう、練習しましょう。注目する項目の例をご紹介します。

  • 売上高と営業利益
    売上高に対する営業利益率の確認は中小企業経営において重要です。営業利益が黒字であっても営業利益率が業界比で見て低い場合は、原価率や固定費用の見直しが必要です。業界毎に基準となる営業利益率は異なるものの、低くても3~5%、理想を10%として考えてみてください。また、原価率が毎月大きく変動していないか確認しましょう。
  • 借入金の詳細
    まずはどこから借りたお金であるか(信用金庫、銀行など)、信用できる機関かどうか確認しましょう。また、返済スケジュールや金利などが支払い能力を超えていないかを見直しましょう。そして、何のために借りたお金であるか把握しておきしょう。決して全ての借入が悪いわけではありません。
  • 資金繰り
    会社が黒字経営である場合でも、資金回収の遅れ(売掛金や受取手形)や老朽した棚卸資産の停留などにより、流動資産が少なくなっている場合は注意が必要です。運転資金不足による黒字倒産のリスク回避のため、取引先とのやり取り(入金期日の設定が適切かなど)を確認しましょう。
  • 固定資産
    建物や土地は時価と簿価で差が大きい場合があります。専門家に依頼し、現在価値の算定をしましょう。また事務所内で使用する機械や(コピー機やパソコンなど)、現場で稼働する製造機、フォークリフトなどの残価の確認も必要です。

株式の承継

経営権委譲にあたり、資本の再構成を行います。そもそも資本構成とは、「誰がどの比率で自社株式を持っているのか」ということです。資本再構成の際に先代から株式を承継しますが、その決定は慎重に行う必要があり、後継者は内訳の詳細を把握するべきです。では、なぜ資本構成が重要視されるのでしょうか。

会社の重要事項を決定する株主総会では、持株に比例した議決権を行使できます。つまり自社株式の所有率が高いほど、経営上の意思決定力が強くなります。よって、資本構成は経営権に直結し、「所有と経営」に大きく影響します。家族経営の中小企業の場合は、先代が株式を100%持っているパターンが多く見受けられますが、「役員である家族に一部所有させている」「事業参画の有無に関わらず親族が一部保有している」「親族外にも株主がいる」など様々なケースがあります。

一方で、株式所有権が分散がすると経営の意思決定が困難になる恐れがあります。後継者が単独で意思決定を進めたい場合は、全株式の2/3を保有できるよう対策しましょう。(重要な決定として、減資や組織再編、定款変更等が挙げられます)その際、親族への株式以外での資産分配について考えてください。後継者が会社資産を相続する分、先代の個人資産(土地や投資資産など)は、役員を務める兄弟や経営不介入の親族に承継させるなどといった配慮が大切です。遺恨が残ってしますケースも見受けられますので、親族同意の上での取り決めを行いましょう。

法人・個人問わず資産の承継には専門的な知識が必要となります。長くなるため本記事では割愛しますが、手続きや相談先などの情報収集は早い段階で行うことをおすすめします。
株式や土地、その他資産等の相続については、弊社のグループ会社である一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターがご支援いたします。HPには事例や相続用語などの詳細がございますので、併せてご覧ください。

税金対策について

事業承継における株式譲渡方法には、「生前贈与」「相続」「売買」があります。M&Aでは主に売買で行われ、親族内承継では生前贈与と相続で行われることが多いです。今回は生前贈与を前提に考えてみます。

事業承継時の株式譲渡には贈与税が発生します。株価が高いほど納税額が上がってしまいます。対策として株式価値の引下げを行いますが、株価引下げ=純資産額の引下げと考えていただいて大丈夫です。純資産の内訳などは、は貸借対照表で確認してみてください。では、純資産額引下げ例を挙げてみましょう。

  • 退職金支払 
    退職金は損金算入が可能です。退任する際は、損金算入限度額内で退職金を費用として計上しましょう。
  • 売却損、除却損などの計上
    査定の結果、簿価よりも価値が低く回復見込みがない土地や建物を売却したり、使用見込みがない設備や不良在庫を処分したりして損失を計上しましょう。
  • 法人生命保険への加入
    積立金を負債計上することで、純資産額を減らします。ただし、2019年の税制改正により損金算入割合に変更があったので、必ず専門家への相談が必要です。

    また、事業相続税制の活用も考えましょう。事業相続税制とは、後継者に資産や株式を相続した際に発生した相続税・贈与税一部を免除したり、納税時期を猶予したりする制度のことを指します。一般措置と特例措置があり、特例措置を希望する場合は、事業計画書を2026年3月31日までに都道府県に提出する必要があります。事業計画作成には時間がかかるため、必要な方は早急に準備を始めてください。また、特例手続きにも専門知識が必要ですので、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談しましょう。

主な取引先や顧客への根回し

主な取引先(金融機関や出資者、仕入れ先など)や主要顧客に対し、極力早い段階で挨拶することで今後の信頼につながります。
資金繰りの安定性を保つためにも、融資・出資先に対しては事業計画を作成し、今後の事業展開や見通しに対する説明をすることで信頼関係を維持しましょう。仕入れ先に対しても、「買う側である」という立場に油断してはいけません。従来の費用で安定的に資材を確保するためにも、今後の事業について(これまで通りであるか、または更に発展させていく予定であるか)の誠実な説明が求められます。
中小企業の顧客の中には、特に社長の人柄に好感を持ち、取引をしていたというケースもあることでしょう。そんな中ある日突然代表の変更を知ることとなれば、長年の信頼関係も崩壊しかねません。しかしながら全ての顧客に直接挨拶することは労力となりますので、まずは顧客をセグメント化しましょう。セグメント化とは、各顧客とのこれまでの関係値から重要度を洗い出しランク分けすることです。格付けに応じて通知方法・通知時期・期間などを決定し、計画的に行いましょう。

後継者育成と権限委譲

事業承継を成功させるには、長い時間と労力が必要です。会社の規模にもよるものの、最低でも3年~5年、長いと5年~10年かかると想定してください。元々従業員として働いていたり、実務は既知であったりするとこの限りではありません。
大まかな流れとして
①育成期間と権限委譲期間の計画作成。
 権限委譲だけでも1年近くかかることもあります。
②現場研修
 実務を習得すると同時に現場従業員との信頼関係構築も必要です。士気を維持し、人材流出を防ぐためにも、現場で働く人に認めてもらおうとする謙虚な姿勢で取り組むことが大切です。
 実務習得後には何かしらの実績を作ることで、より信用を得ることもできるでしょう。(〇〇円の売り上げを立てる、新規事業を立ち上げるなど)
③社外セミナーや研修への参加
 家族経営は保守的になりがちです。時代やニーズの変遷が目まぐるしい現代においては、伝統を守りつつも新しい価値観や経営方針を取り入れていく姿勢が求められます。
 例えば経営者を対象としたセミナーに参加したり、異業種交流会に出席したりするなど、外部との関りを通して広い知見を得ることも大切です。
④経営面での引継
 会社の財政面・非財政面それぞれについての深い理解が必要です。
 財務資産:資金、収益力、株価など
 無形資産:ブランド力、知的財産、ソフトウェア、人材や従業員のスキルなど
 有形資産:設備、機械、施設などの製造資本など
これらの資産に加え、経営理念やビジョンなども引継ぎます。後継者の経営方針次第で大切な資産をさらに大きくすることも、失うこともできます。最低限維持はできるよう、前任者の意思や方針を尊重しつつ、時代に沿った人材育成や事業案などを取り入れていくことが企業の存続に繋がります。

まとめ

拙筆ながら、最後までご拝読いただきありがとうございます。
我々GSRコンサルティングでは、事業承継でお悩みの経営者様にお力添えできますよう、日々活動しております。
また、グループ法人である一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター一般社団法人埼玉県スマート事業承継とも共同し、事業承継に関する相続対策や不動産コンサルティングについてのサポートも行っております。
初回無料相談を承っておりますので、是非お気軽に一度ご相談ください。

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