騒音と建物の遮音性能【建築コラム】

建物のオーナーになる際、ぜひ気を付けて頂きたい点の1つが「音」の問題です。せっかく見た目が美しい建物であっても、居住者や利用者が心地よい生活を送れなければ離れていってしまいます。本日は、音について考えるべき点を解説いたします。

遮音等級

遮音等級とは、建物の遮音性能を評価する方法を定めた規格です。隣室間の空気を伝わった音(TVの音や話し声など)と、上下階の衝撃(食器の落下・子どもの足音など)によって考え方が異なり、その等級が定められています。

①室間音圧レベル差に関する遮音等級

D値と呼ばれる値で表されます。音源室内で音を発生させたときに、音の発生する部屋とその隣室それぞれの音圧レベルを測定し、2室間の音圧レベルの差を数値で表したものです。つまりこの差(D値)が大きいほど音がよく遮られ、遮音性能が高いと言えます。

②床衝撃音レベルに関する遮音等級

L値という値で表されます。衝撃音を上階で発生させた場合に下階で測定される音圧レベルの数値です。この数値が小さいほど、床衝撃音の遮音性能が高いといえます。

また、床衝撃音は、軽量床衝撃音(食器の落下など)と重量床衝撃音(子どもの足音など)に分けられます。音の性質や防止対策は、軽量床衝撃音と重量床衝撃音では、大きく異なります。

騒音対策

①吸音材料の使用

1.板状材料・膜材料

板状材料に音が当たると、共振する周波数になると振動を起こし、音のエネルギーが熱エネルギーに変えられます。薄い板の方が、よく振動をしますが、この振動による吸音は、主に低音域で生じます。

注意点として、板状材料は、取り付け方により板の振動による吸音効果が減少してしまうため、振動出来ることを意識した取り付けが必要です。

また、板状材料や膜材料と、構造上の壁の間に空気層を設け、その空気層に多孔質材料(グラスウール等)を入れることで、低音域の吸音率が上がります。

2.多孔質材料

多孔質材料とは、グラスウール等の繊維材料のことです。音波が繊維の隙間に入り、空気が振動し、その抵抗によって音エネルギーが熱エネルギーに変わって吸音されます。

こちらは、高音域の吸音率が高い素材ですが、音の発生場所から見て、多孔質材料の後ろ側に空気層を設けると、低音域の吸音率が大きくなります。また、後ろの空気層の幅を大きくすると、より低音域の音が吸音されます。

②家具による吸音

カーペットやカーテンによる吸音効果も考えることができます。

カーペットでは、パイルが長いもの・密なものが中高音域の吸音効果が期待されます。遮音等級(L値)記載の物もあり、必要な等級の物を選ぶことで、建物自体とは別に手軽な形で遮音性能を得ることが出来るのが利点です。

カーテンにおいても同様に、それぞれ性能が記載されたものを利用することで、手軽に防音対策を行うことが出来ます。

まとめ

本日は、建物の遮音性能について解説させて頂きました。遮音性能を上げることは、居住者の快適性を上げることに繋がります。快適性は、長く住んでもらうための一つの要因となりますので、ぜひ賃貸マンションの建設を考えられる際には、設計段階に建築士に伝えるなど、ご検討頂ければと思います。また、遮音性能以外にも断熱性など、快適性を保つ工夫は多数ございますので、ご予算の中で出来る限り対応いただければ、より良い賃貸経営に繋がってまいります。

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