建築・不動産などに関わる国家資格【建築コラム】

皆さまは、建築に関わる国家資格について、一級建築士、二級建築士などをご存知のことと思います。本日は、「建築・不動産・街づくり」の観点から国家資格について解説致します。
街づくりは、単に建物を建てるだけでなく、人々の生活、経済活動、文化、そして環境が複雑に絡み合う多角的な営みです。そのため、建築、土木、不動産といった多岐にわたる分野の専門家が連携し、それぞれの知識と技術を結集する必要があります。ここでは、これらの分野における主要な国家資格と、それらが街づくりにおいてどのように協力し合うかについて紹介します。
建築分野の国家資格
建築分野は、建物の設計、施工、維持管理に関わる専門家が活躍します。
建築士(一級、二級、木造)
役割
建築物の設計、工事監理を行います。一級、二級、木造では設計できる建物の構造の種類と規模が異なります。
具体的な業務範囲の違いについては、以下にて別途解説致します。
街づくりでの協力関係
地域の特性や景観に配慮した建築デザインを提案し、耐震性や省エネルギー性といった機能面の向上にも貢献します。土木技術者と連携し、建物とインフラ(道路、上下水道など)との接続を計画したり、都市計画家と協力して地区計画に沿った建物の配置を検討したりします。
建築施工管理技士(一級、二級)
役割
建築工事の施工計画を作成し、工程、品質、安全、コストなどを管理します。
街づくりでの協力関係
建築士が設計した建物を、安全かつ効率的に、そして計画通りに完成させるための現場監督的な役割を担います。土木施工管理技士と連携し、敷地造成や周辺インフラ整備と建築工事のスケジュール調整を行うことで、円滑な街づくりプロジェクトの推進に貢献します。
建築士の業務範囲の違い
皆さんは、一級建築士、二級建築士というのはご存知の方が多いことと思いますが、木造建築士という資格もございます。ここでは、建築士の業務範囲の違いについて解説致します。
一級建築士
国土交通大臣の免許で、すべての建築物の設計・工事監理が可能です。
規模や構造に制限がないため、高層ビル、病院、学校、劇場、百貨店など、あらゆる大規模な建築物を扱うことができます。
二級建築士
都道府県知事の免許で、比較的規模の小さい建築物の設計・工事監理が可能です。
主な対象は、延べ面積300㎡までの木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建物です。具体的には、一般住宅や小規模なビルなどが中心となります。
高さや軒の高さにも制限があります。(例:高さ13m以下、軒の高さ9m以下)
木造建築士
都道府県知事の免許で、木造建築物のみの設計・工事監理が可能です。
対象となるのは、2階建てまでで延べ面積が100㎡を超え300㎡以内の木造建築物です。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建築物は扱うことができません。
木造建築に特化した専門家として、伝統的な木造建築や木造住宅の分野で強みを発揮します。
また「一級建築士だから安心」ということではありません。
専門としている建物規模については、これまでその方が設計された建物の規模や構造を知る必要があるといえるでしょう。
資格の種類に関係なく、木造の建物を検討している方にとっては、木造を主に設計されている経験豊富な建築士が良い提案をしてくださる場合も多くあるといえるでしょう。
土木分野の国家資格
土木分野は、道路、橋梁、河川、上下水道、鉄道など、社会基盤となるインフラの整備・管理を担います。
技術士(建設部門)
役割
建設事業全般に関わる高度な専門知識と応用能力を持ち、計画、調査、設計、施工、維持管理までの一連の業務を統括・指導します。
街づくりでの協力関係
大規模な都市開発において、交通ネットワークの整備、治水対策、ライフラインの配置など、広範なインフラ計画の立案と実行を主導します。都市計画家、建築士、不動産鑑定士など、多様な専門家と連携し、総合的な視点から街のグランドデザインを構築します。
土木施工管理技士(一級、二級)
役割
土木工事の施工計画を作成し、工程、品質、安全、コストなどを管理します。
街づくりでの協力関係
道路、橋、上下水道などのインフラ整備において、現場の最前線で指揮を執ります。建築施工管理技士と連携し、建物と周辺インフラの整備を同時に進めることで、街全体の機能性を高めます。
測量士
役割
土地の形状や高低、位置などを正確に測量し、地図作成や工事計画の基礎データを提供します。
街づくりでの協力関係
開発地の正確な測量を行うことで、建築物やインフラの配置計画の基礎を築きます。土地家屋調査士と連携し、不動産の登記に必要な情報を提供することもあります。
不動産分野の国家資格
不動産分野は、土地や建物の売買、賃貸、管理、評価に関わり、経済的な側面から街づくりを支えます。
宅地建物取引士
役割
不動産の売買や賃貸の仲介、重要事項の説明など、不動産取引における公正かつ円滑な進行を担います。
宅地建物取引士には、独占業務として、
・重要事項の説明(宅地建物取引業法第35条)
・重要事項説明書(35条書面)への記名
・契約書(37条書面)への記名
があり、宅地建物取引業法によって厳しく定められているため、宅建士以外の者が行った場合は、罰則の対象となります。
街づくりでの協力関係
新しい街の土地や建物の取得、既存の不動産の有効活用など、不動産取引を通じて街づくりに必要な土地の供給や流通を促進します。都市計画家や建築士と連携し、開発計画に沿った不動産の取得や、用途地域に応じた不動産活用のアドバイスを行います。
不動産鑑定士
役割
不動産の経済価値を評価し、適正な価格を提示します。
街づくりでの協力関係
公共事業用地の取得価格の算定、再開発における権利変換の評価など、街づくりにおける土地や建物の経済的な価値判断の基準を提供します。都市計画家や行政と連携し、最適な土地利用計画の策定に貢献します。
マンション管理士
役割
マンション管理組合の運営や管理規約の作成、トラブル解決など、マンションの維持管理に関する専門的な助言を行います
街づくりでの協力関係
集合住宅の維持管理を通じて、居住者の良好な居住環境を保ち、街全体の住環境の質を向上させます。特に大規模な集合住宅が開発される街では、長期的な視点での住環境の維持に貢献します。
土地家屋調査士
役割
不動産の表示に関する登記の専門家であり、土地の境界確認や建物の新築・増築などの際に、不動産登記に必要な調査・測量・申請手続きを行います。
街づくりでの協力関係
開発によって土地の形状や区画が変更される際、正確な測量に基づいた登記手続きを行うことで、不動産の権利関係を明確にし、円滑な街づくりを支援します。測量士や宅地建物取引士と連携し、土地利用の基礎情報を提供します。
街づくりにおける協力関係
これらの国家資格を持つ専門家は、単独で活動するのではなく、密接に連携することで、より良い街づくりを実現します。
計画段階
都市計画家(資格はないが、上記の資格を持つ者が多い)
街全体のビジョンを策定し、土地利用計画、交通計画、緑地計画などを立案します。
技術士(建設部門)
インフラ整備の全体計画を策定し、実現可能性を検討します。
建築士
マスタープランに基づき、具体的な建物の配置やデザインの方向性を検討します。
不動産鑑定士
計画地の不動産価値を評価し、事業の経済性を検討します。
測量士・土地家屋調査士
計画地の現況を正確に把握するための測量を行い、土地の権利関係を確認します。
設計・施工段階
建築士・建築施工管理技士
建物の詳細設計を行い、建設工事を監理・管理します。
技術士(建設部門)・土木施工管理技士
道路、上下水道などのインフラの詳細設計を行い、工事を監理・管理します。
宅地建物取引士
計画に必要な土地の取得や、完成した建物の販売・賃貸を仲介します。
維持管理・運営段階
マンション管理士
集合住宅の維持管理をサポートし、良好な住環境を保ちます。
建築士・技術士
既存の建物やインフラの改修・更新計画を立案し、安全性を維持します。
宅地建物取引士
不動産の流通を促進し、街の活性化を維持します。
このように、建築、土木、不動産の各分野における国家資格者は、それぞれの専門性を活かしながら、互いに連携し、情報共有を行うことで、機能的で魅力的、そして持続可能な街づくりに貢献しています。行政や地域住民との対話も不可欠であり、多様な視点を取り入れることで、より包括的な街づくりが実現されます。
GSRコンサルティングは、主たる業種は不動産業ではございますが、宅地建物取引士以外にも建築士、測量士補等の有資格者が在籍しております。
必要であればその他士業とも連携し、お客様の不動産に関して、不動産の観点だけでなく街づくりの観点から見た有意義なご提案をすることで、よくある土地活用、例えば賃貸マンション建設といった括りにとらわれない、幅広いご提案が可能です。
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