木造密集エリアの問題点【建築コラム】

木造密集エリアの不動産を相続する際には、一般的な相続の課題に加えて、そのエリア特有の様々な問題点が生じやすいです。主な問題点を以下にまとめます。

遺産分割の難しさ

評価額と実際の価値のギャップ

木造密集エリアの建物は、築年数が古いものが多く、固定資産税評価額は低くても、立地によってはそれなりの価値がある場合があります。しかし、老朽化が進んでいると、売却しようとしても買い手がつかない、あるいは解体費用がかさむなど、「負動産」になってしまうケースも少なくありません。この評価額と実際の価値のギャップが、相続人間の遺産分割協議を複雑にする要因となります。

物理的な分割の困難さ

狭小な敷地に複数の建物が密集している場合、土地を物理的に分割することが困難であり、共有名義のままにせざるを得ないケースがあります。共有名義は、将来的な売却や建て替えの際に、共有者全員の合意が必要となるため、トラブルの原因となりやすいです。

相続人の合意形成の難しさ

相続人の人数が多い場合や、遠方に住んでいる相続人がいる場合、また、特定の相続人がその不動産を利用する予定がない場合など、相続人全員の意見をまとめるのが非常に困難になることがあります。

経済的負担の増加

維持管理費の負担

老朽化した木造住宅は、修繕費用や光熱費、固定資産税などの維持管理費がかかります。特に、利用予定がない場合でも、所有している限りこれらの費用が発生し続けます。

解体費用の問題

売却するにしても、買い手がつきにくい場合、解体して更地にする選択肢も出てきます。しかし、解体費用は高額になることが多く、相続人がその費用を負担することになります。

特定空き家認定のリスク

管理されていない空き家は、「特定空き家」に認定される可能性があります。特定空き家に認定されると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍になるなど、税負担が大幅に増加します。

相続税の納税資金不足

相続財産が不動産のみで、預貯金などの現金が少ない場合、相続税の納税資金が不足することがあります。木造密集エリアの不動産は売却が難しいため、納税資金を捻出するための手段が限られる場合があります。

法規制と防災上の問題

建物の老朽化と耐震性の問題

木造密集エリアの建物は、旧耐震基準で建てられたものが多く、耐震性が低い場合があります。地震などの災害時に倒壊する危険性があります。

火災延焼のリスク

建物が密集しているため、一度火災が発生すると延焼しやすいという大きなリスクがあります。地域によっては、不燃化を促進するための補助金制度などがありますが、建て替えには費用がかかります。

再建築不可の問題

建築基準法上の道路に接していない「再建築不可」の土地も存在します。このような土地の場合、現在の建物を解体しても、新たに建物を建てることができません。相続したとしても、活用方法が極めて限定されることになります。

狭い道路と緊急車両のアクセス

狭い道路が多く、消防車や救急車などの緊急車両のアクセスが困難な地域もあります。これは、災害時の避難や救助活動を妨げる要因となります。

地域活性化への影響

まちづくりとの関連

自治体は、木造密集エリアの防災性向上や住環境整備のため、「密集住宅市街地整備促進事業」などの施策を進めている場合があります。これらの事業と相続が絡むと、建て替えや土地の提供など、個人の意思とは異なる方向での協力が求められる可能性があります。

相続する上での対策

上記のような問題点を踏まえ、木造密集エリアの不動産を相続する際には、以下のような対策が考えられます。

生前の対策

遺言書の作成

遺言書で遺産分割方法を明確にし、特定の相続人に不動産を相続させるなど、具体的な指示をしておくことで、相続人間の争いを未然に防ぎやすくなります。

生前贈与の検討

不動産の贈与を検討することで、相続時の負担を軽減できる可能性があります。

不動産の整理・売却

生前のうちに、利用予定のない老朽化した不動産を売却するなど、整理を進めておくことも有効です。

相続発生後の対策

相続人全員での話し合い

早めに相続人全員で集まり、不動産の現状や将来の活用について話し合うことが重要です。

専門家への相談

司法書士、弁護士、税理士、不動産鑑定士、不動産業者など、各分野の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが、トラブル回避や円滑な相続に繋がります。

自治体の支援制度の活用

不燃化特区制度や老朽住宅の建て替え補助金など、自治体が実施している支援制度を調べて活用することも検討しましょう。

相続放棄も選択肢に

不動産が「負動産」であり、維持管理費や解体費用が多額にかかる場合など、相続放棄も選択肢の一つとして検討する必要があるかもしれません。

木造密集エリアの不動産相続は、複雑な要素が絡み合うため、早めに情報収集を行い、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。

以下、木造密集エリアに関する専門家として「建築士」に求められる役割を解説致します。

木造密接地域における建築士の役割

防災性向上のための設計・提案

耐火・準耐火建築物への誘導

火災時の延焼リスクを軽減するため、現行の建築基準法に基づいた耐火・準耐火構造の建物への建て替えを促進します。補助金制度などを活用した具体的な提案も行います。

耐震性の確保

新築の場合は現行の耐震基準を満たした設計を徹底し、既存建築物の場合は耐震診断や耐震改修の提案・設計を行います。

延焼防止対策

隣地境界線からの離隔距離の確保、防火窓の採用、延焼の恐れのある部分の不燃化など、火災の拡大を防ぐための具体的な設計を行います。

避難経路の確保

狭い敷地でも、非常時の避難経路を考慮した動線計画や、道路の拡幅に協力するような配置計画を提案します。

複雑な法規制への対応と許認可業務

木造密集地域は、都市計画法上の防火地域・準防火地域に指定されていることが多く、建築基準法以外の条例や地域の規制も加わる場合があります。建築士はこれらの複雑な法規制を正確に理解し、適合した設計を行う専門家です。

建築確認申請はもちろん、各種補助金申請、開発許可申請など、行政との折衝や各種申請業務を代行します。特に「再建築不可」の物件など、条件が厳しい案件でも、適法な建て替えやリフォームを可能にするためのノウハウを提供します。

住環境改善と快適性の追求

採光・通風の確保

密集地ゆえの制約の中で、日当たりや風通しを最大限に確保するための設計を工夫します。天窓や高窓、吹き抜けの活用など、限られた敷地での快適性を追求します。

プライバシーの配慮

隣地との距離が近い場合でも、窓の配置や建物の形状を工夫し、居住者のプライバシーを保護します。

省エネルギー性・高機能化

高断熱化や高効率設備導入により、省エネルギーで快適な住まいづくりを提案します。

権利調整と合意形成の支援

木造密集地域では、土地の権利関係が複雑であったり、隣地との境界問題、共有名義の建物など、様々な課題を抱えているケースが多く見られます。

建築士は、設計業務だけでなく、地権者や関係者間の合意形成を支援し、円滑な事業推進に貢献する役割も担います。特に共同建て替えや、区画整理事業などでは、関係者間の調整能力が求められます。

まちづくりへの貢献と地域活性化

個々の建築物の改修・建て替えを通じて、地域全体の景観向上や活性化に寄与します。

地域の特性や歴史を理解し、それに配慮したデザインや、コミュニティ形成につながるような計画(例:シェアオフィスや地域交流スペースの併設など)を提案することもあります。

行政やNPO、地域住民と連携し、防災訓練への参加や防災マップ作成、空き家対策など、まちづくり活動に積極的に関与することもあります。

専門知識と情報提供

建物の老朽化診断や耐震診断、アスベスト調査など、専門的な調査・分析を行い、適切な対策を提案します。
防災対策に関する最新の情報提供や、各種補助金・助成金制度、税制優遇措置など、クライアントにとって有益な情報を提供します。

GSRコンサルティングには、建築士を始めとする、建築・不動産の専門家が在籍しております。お持ちの不動産において、木造密集地のように難しいものである場合にも対応し、より良い解決を目指すご提案が可能です。
ご興味をお持ちになった方は、まず一度、弊社の無料相談にて、お話をお聞かせいただければと思います。

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