建築物の省エネ基準による変化【建築コラム】
2022年4月22日「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。床面積300㎡以上の非住宅建築物を対象とした省エネ基準への適合義務を、すべての新築住宅・非住宅を対象とすることとなります。本日はまず、建築物の省エネ基準についてご説明していきます。
建築物の省エネ基準の目標
2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向けて、国土交通省では、エネルギー消費の約3割を占めている建築分野での省エネルギー対策を進めています。以下に、これまでに閣議決定された法令の中で、建築分野における基準等をご説明いたします。
法令に関する決定事項
「成長戦略フォローアップ」(2021年6月18日閣議決定)
建築基準法令について、木材利用の推進、既存建築物の有効活用に向け、2021年中に基準の合理化等を検討し、2022年から所要の制度的措置を講じます。
「エネルギー基本計画」(2021年10月22日閣議決定)
2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指します。建築物省エネ法を改正し、省エネルギー基準適合義務の対象外である住宅及び小規模建築物の省エネルギー基準への適合を2025年度までに義務化するとともに、2030年度以降新築される住宅・建築物について、 ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、整合的な誘導基準・住宅トップランナー基準[3]の引上げ、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施します。
[1]ZEH(ゼッチ) ネット・ゼロ・エネルギーハウスの略。高断熱・高気密化、高効率設備によって使うエネルギーを減らしながら、太陽光発電などでエネルギーをつくり出し、年間で消費する住宅の正味エネルギー量がおおむねゼロ以下になる住宅のこと。
[2]ZEB(ゼブ) ゼット・ゼロ・エネルギー・ビルの略。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。
[3]住宅トップランナー基準 建築物省エネ法における一戸建て住宅についてのエネルギー消費性能の向上促進のための基準。①外皮熱性能 ②一次エネルギー消費量(空調、照明、換気、給湯等の諸設備のエネルギー消費量および太陽光発電設備等によるエネルギーの創出量)の削減 について基準がある。
木材利用の促進
ここまでご説明してきた中で、注目されるべき点は、建築における「木材利用の促進」というところです。建築分野における木材の大量使用は、一見、環境破壊につながるように見えます。しかしながら、以下のような理由から、木材を利用した建築を普及させていく事となっています。
①製造時のCO2排出量が少ない
②木材自体が炭素を蓄える性質がある
→地球温暖化防止に役立つ
近年は、耐火の問題を解決すべく、耐火部材やCLTといった技術革新・鉄筋コンクリートとの組み合わせにより、中高層建築の木造化・木質化が行われています。木材は軽量であり、コスト削減や工期短縮の可能性があるため、今後も開発されていく分野となっています。
また、日本の国土の3分の2を占める森林は、水の育成・気候変動の緩和、山地災害の防止等の機能があり、建築分野については、SDGsの以下の項目に当てはまることとなり、木材利用は、有意義だと考えられています。
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
9.産業と技術革新の基礎をつくろう
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
建築分野に利用できるように、林業において伐採計画を航空レーザーやドローン技術などを利用して、整備されていっています。また、他分野の企業においても、森林づくりも行われており、建築・林業だけでなく、分野の垣根を越えて森林のサイクルを大切にする取り組みが行われています。
本日は、建築物省エネ法における今後の建築物の変化についてお伝えしてまいりました。木造建築物が増えると、街の姿も大きくかわっていくことでしょう。今後新築される建築物を見るのが楽しみです。
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