法規制による建築設計への影響【建築コラム】
前回、建築における事前調査の重要性【建築コラム】で様々な事前調査をご説明いたしました。
今回は、その中でご紹介した「建築確認申請」につながってくる部分となり、建物の意匠設計や建築コストに大きく影響する法規制を2つご紹介いたします。
1.防火規定
防火規定により、建築材料に制限をされるため、意匠および建築コストに大きく影響します。
防火地域や準防火地域、というものが都市計画法第9条第21項に、また、法22条区域というものが建築基準法22条に定められており、それぞれの地域ごとに建築物について以下の制限がかかています。
防火地域内の構造制限
階数3以上 | 耐火建築物 |
延べ面積100㎡超 | 耐火建築物 |
上記以外 | 耐火又は準耐火建築物 |
除外:附属建築物(平屋建て延べ面積50㎡以内、外壁・軒裏が防火構造)、卸売市場の上家、機械製作工場(主要構造部が不燃材料) | ※その他、屋根・外壁開口部の防火戸・隣地境界線に接する外壁・看板等の防火措置などに制限が定めらています。 |
準防火地域内の構造制限
地上4階建以上 | 耐火建築物 |
延べ面積1,500㎡超 | 耐火建築物 |
延べ面積500㎡超~1,500㎡以下 | 耐火又は準耐火建築物 |
地上3階建かつ延べ面積500㎡以下 | 技術的基準適合の建築物以上 |
地上2階建以下かつ延べ面積500㎡以下 | いずれともしなくてよい
(外壁・軒裏で延焼のおそれのある部分は、防火構造とする) |
除外:卸売市場の上家、機械製作工場(主要構造部が不燃材料) | ※その他、屋根・外壁開口部の防火戸・隣地境界線に接する外壁などに制限が定めらています。 |
法22条区域内の構造制限
屋根 | 通常の火災 → 発煙しない・屋内に達する損傷を生じない |
木造建築物等の外壁 | 延焼のおそれのある部分 → 準防火性能(屋外→非損傷・遮熱20分)の土塗壁など |
耐火建築物
主要構造部が耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部に防火戸など火炎を遮る設備を有する建築物
準耐火建築物
耐火建築物以外の建築物において、主要構造部が準耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部に防火戸など火炎を遮る設備を有する建築物
このように主要構造部の性能や開口部の設備など、コストアップの要因が多数発生します。
また、法22条に関しては、外壁の材料にも制限もかかり、意匠にも制限がかかってきます。
2.高度地区による制限
高度地区は、都市計画法により基づく地域地区の一つで、自治体毎に必要に応じて定められています。
最高限度と最低限度を定めることができ、最高限度を定める場合には以下の2つの制限を組み合わせて制限されています。
絶対高さ制限
市街地の全体的な環境の維持を目的とし、建物の高さを制限しています。
斜線による高さ制限
建築基準法には「北側斜線制限」というものが存在していますが、その制限以上にその地域に合わせて厳しく制限をかけられている場合があります。
主に該当建築物の北側の建物への日照や通風の確保を目的とし、高度地区ごとに北側隣地境界線における最低高さ及び斜線の勾配が定められています。
この制限により、もし、建物を限度枠いっぱいに建てたと仮定すると、斜めとなる箇所が出来ます。
つまり、壁面や屋根の形状に大きく影響する制限だと考えることが出来ます。
これら以外の法規制も含め、建物は設計段階から様々な制限の中、建てられています。
そうした制限の中にありながら、施主の要望にも精一杯寄り添った提案をどれだけ行えるかが設計者の腕の見せ所となってまいります。
逆に言えば、これらの法規制や土地や近隣の状況による制限があるからこそ、唯一無二の素晴らしい建築物が生まれてくるのだと思います。
皆様もぜひ、ご自身がお持ちの土地がございましたら、ここに出来る建物はどんな制限を受け、その場所に限らず地域にとってどんな形状になることが望ましいのかなど考えてみてはいかがでしょうか。
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