建築における事前調査の重要性【建築コラム】
令和3年7月 静岡県熱海市で大規模な土石流災害が起こりました。住宅が、一瞬にして破壊され流されていくという大変衝撃的な映像がニュース等で流されました。建物は、土地があってこそ成り立つものです。つまり、その土地や地域をきちんと把握することが、建築物を設計施工していく上で何よりも大切だといえるでしょう。
そして、その他にも建物を建てていく中には様々な調査が必要となります。本日は建築の事前調査や申請等についてお話いたします。
1.地盤調査
建物を建てる上での地盤調査の目的は、やはり建物の安全性に繋がる以下の3点が大きいかと思います。
①地盤の強度
②地盤による建物の支持力
③地層や土質の違いによる、変形や揺れやすさ
そして、ひとくちに地盤調査といっても、その方法は1種類ではありません。
戸建住宅を建設する際に多く用いられるのは、「スウェーデン式サウンディング試験」
大規模建築物となってくると「ボーリング標準貫入試験」
その他にも5種類ほどの方法が一般的に用いられ、それぞれに、地盤の特徴についての調査個所が異なります。
建物の規模、用途、地域の土壌特性、そして予算にあった方法で最適な調査を行う必要があります。
どの方法を組み合わせるかは、建築士や施工業者が、主に検討をしていくのですが、前回のコラム【建築物を作る工程に関わる人の役割】でもお話しした通り、「建築主(施主・事業主・発注者)」につきましても、その土地の状態をきちんと理解しておく必要があると言えるでしょう。
2.埋設物調査
こちらの調査は、敷地内にもともとあった建物の基礎などが残されていて撤去作業が必要となる場合を指します。この撤去作業には、時間や費用がかかる場合もあるので、十分な調査が必要です。
また、歴史的価値のある文化財などが発見された場合は、埋蔵文化財保護法に基づく届け出を行い、発掘調査に協力する必要があり、新築工事着手がすぐには困難となります。
3.配管調査
敷地の前面道路には、水道管、ガス管、電話線などのライフラインが埋設されております。
その場所を特定せずに掘削工事を進めると、自身の敷地だけでなく周辺地域を含めた事故を引き起こす危険性があります。
役所の図面で十分な調査をし、工事を始める必要があります。
4.近隣調査
工事等において近隣の建物や土地に影響を及ぼす可能性が無いかも大切な調査の一つです。地盤沈下などを起こしたりしないよう、掘削作業や振動を与える重機を使用する前に確認しておく必要があります。また、工事前後の外観内観調査(写真撮影等)も可能な限り行っておく必要があります。
また、境界もきちんと確認する必要があります。公図などによる調査だけにとどまらず、近隣住民の立ち合いのもと、きちんと確認しておくことも大切です。
周辺の状況確認にもつながってきますが、近隣住民の心理面もとても大切で、工事の内容を説明しつつ、先方の状況も把握し、進捗について話をして進めることも大変重要なポイントとなってきます。
5.申請や届出
いよいよ工事を開始する準備が整ったら、申請や届け出が必要となります。
建物を建てる際の主な申請や届け出は以下の通りです。
建築確認申請(建築基準法)
新築する建築物が建築基準法に適合しているかどうか、市区町村の建築主事または指定された民間の建築確認検査機関の確認を受けなければいけません。建築主の責任ではありますが、設計者が委任されて行うことが一般的となっています。
周辺道路
前面道路を使用する場合・車両規制が必要な場合は、警察署や道路管理者との事前協議が必要となります。
(道路使用許可申請・道路占用許可申請など)
電気や水道
電力会社や水道局に工事用の電力使用や水道水の利用・汚水排水についての届け出を行う必要があります。
労働の安全性
労働安全衛生法に基づき高さ31mを超える建築物の建築工事については、事前に工事の計画内容を届け出なくてはいけません。
労働基準監督署が審査し、事前に労働災害を防止することを目的としています。
以上、本日は建築の事前調査の大切さをお話ししてまいりました。その後の工事を円滑および安全に進める上でとても重要な過程となります。
ぜひ一度ご自身の不動産についても以上のことに繋がる部分を、興味を持っていただき、建築時の図面などで確認頂けたらと思います。
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