安定構造物を目指して~荷重と応力~【建築コラム】

本日は、構造計算に関わる荷重と応力、構造物の安定についてお話しします。

荷重とは?

建物には、部材・仕上げ材による自重(固定荷重)、人間や物品などの積載荷重、積雪荷重、風圧力、地震力、土圧、水圧、振動及び衝撃による外力などの力が作用します。

構造計算において、これらをまとめて「荷重」といいます。

建築基準法施工令 第83条~第88条において、荷重にかかる規定が記載されています。

 

荷重の種類

荷重は、作用している状況から判断して以下のように分類されます。

①集中荷重

部材の1点に集中して作用する荷重 単位→N,kN

 

 

 

②等分布荷重

部材に平均的に分布して作用する荷重 単位→N/m,kN/m

建築基準法施工令 第84条において 各部にかかる固定荷重の設計用荷重が定められています。

例)屋根・天井・床・壁の仕上げ材

 

③等辺分布荷重

部材に一定の比率で変化しながら作用する荷重 単位→N/m,kN/m

 

 

 

 

④モーメント荷重

 

部材上のある点にモーメントとして作用する荷重 単位→N/m,kN/m

 

 

これらのような荷重を想定し、建物が倒壊しないように構造を考えていきます。

 

応力

構造物に外力が加わり変形しそうになるとき、その外力に抵抗して、構造物の部材内には「応力」というものが生じています。

部材内の応力がどんどん伝わって、最後に構造物を支える部分の反力となっていきます。

 

応力の種類

 

①軸方向力 部材の軸方向にかかる応力 (部材が材軸方向に伸縮されるのに逆らおうとするイメージの力)

②せん断力 部材に垂直方向に発生する応力(部材が垂直に切断されようとするのに耐えようとするイメージの力)

③曲げモーメント 部材を曲げようとする応力(部材が曲げられることに反発しようする力)

 

構造力学上の構造物の種類

安定構造物

これまでにご説明したような外力や荷重を受けて応力・反力が発生した時に、移動・変形しない構造物を「安定構造物」といいます。

構造設計では、基本的に「安定構造物」を目指すことになります。

安定構造物の中をさらに分類すると

「静定構造物」「不静定構造物」と分けられる場合があります。

一見すると、静定構造物が良くて、不静定構造物が良くないような印象がありますが、それは違います。

静定構造物

これまで説明してきた、力のつり合いを考えて、反力や応力を求めることが出来る構造物です。

シンプルにつり合いが保たれた安定構造物です。

不静定構造物

力のつり合いを考えても、反力や応力を計算できない構造物です。

これは、支える部材が多く入っているなどして、計算が複雑になっている構造物です。

簡単に言うと、余分な部材が存在し、強化し過ぎている構造物といえるでしょう。不静定構造物は、外力によって、一部に強い力がかかり、部材が壊れてしまうことがあれども、構物全体が崩壊する可能性は低くなります。

 

ここまでにご説明した、力のつり合い、荷重の想定、部材毎の応力等を考えながら、安定構造物を目指すための計算をするのが、構造計算です。構造力学というと、物理学が基本にある学問であり、苦手意識を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これまでの構造力学に関するコラムを通して、建築構造力学の大まかなイメージをつかんで頂き、建築物の構造を理解する上での一歩になると幸いです。

 

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